最新作「涼宮ハルヒの直感」が発売されることが発表され、話題となっている「涼宮ハルヒ」シリーズ。
今回は第一作目、「涼宮ハルヒの憂鬱」を書評していきます。
「まだ読んだことないよ」、っていう人、「昔読んだけどどんなだったっけ?」という人もわかるように書きますね!
✔︎「涼宮ハルヒの憂鬱」の感想
- 概要
- 基本情報
- どんな人ににおすすめか
- タイトルの意味
- 著者紹介
- あらすじ
- 特徴・感想
- ちょっと深掘り
「涼宮ハルヒの憂鬱」の感想
概要
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、私のところに来なさい。以上」。入学早々、ぶっ飛んだ挨拶をかましてくれた涼宮ハルヒ。そんなSF小説じゃあるまいし‥‥‥と誰でも思うよな。俺も思ったよ。だけどハルヒは心の底から真剣だったんだ。それに気づいたときには俺の日常は、もうすでに頂上になっていた——。第8回スニーカー大賞<大賞>受賞作、ビミョーに非日常系学園ストーリー!
(本書裏表紙、概要より引用)
↑書影はこんな感じ。
基本情報
「涼宮ハルヒ」と聞くと、アニメを思い浮かべる人も多いかもしれませんね。2006年に制作されたアニメ版はあの「京都アニメーション」さんが手掛けており、大ヒットしました。
本書「涼宮ハルヒの憂鬱」が出版されたのは2003年。2020年9月現在までに「涼宮ハルヒ」シリーズは10作品が出版されています。
そして今年の11月25日に待望の最新作「涼宮ハルヒの直感」が発売される予定です。ファンからするとテンションマックスです!笑
これだけ長く愛されているというのもすごいことですよね。
どんな人ににおすすめか
- 青春小説が好きな人
- SFが好きな人
- 「変な部活もの」が好きな人
- 非日常が好きな人
- 「厨二病」的な作品が好きな人
- 可愛い女の子がじゃれあっているのを見たい人
- 世の中が面白くないと感じている人
こんな人が楽しめると思います!
タイトルの意味
タイトルの意味ですが、そのまんま「涼宮ハルヒさんが憂鬱してる」っていう解釈でいいかなと思います。後にも言及しますけど、涼宮ハルヒさんは好奇心の塊みたいな人で、自分の期待に反して世の中が面白くないことを憂鬱に感じているんですね。
それにしてもこのタイトル、見事だと思います。「涼宮ハルヒ」という特徴的な名前が目を惹きますし、「憂鬱」という難しめな熟語が意外性を生んでいます。ハルヒの姿が描かれている書影と相まって、「この女の子が憂鬱?どういうこと?」って気になる人が多いんじゃないでしょうか。素晴らしいタイトルです。
著者紹介
著者の谷川流(たにがわ ながる)さんは、1970年生まれ。生まれ育った兵庫県西宮市は「涼宮ハルヒ」シリーズの舞台になっています。
関西学院大学を卒業後、婦人服店の店長を経て、2003年3月に作家デビュー。『電撃萌王』vol.05掲載『電撃!!イージス5盾と羊と』という作品でした。ハルヒが最初の作品ではないんですね。
同年6月に角川スニーカー文庫から「涼宮ハルヒの憂鬱」、電撃文庫から「学校を出よう!1 Escape from The School」のが同日発売されて、文庫デビューしています。
「涼宮ハルヒ」シリーズが10作品、「学校を出よう!」シリーズが6作品など、著書多数です。
あらすじ
主人公のキョンは平凡な高校生。高校入学と同時に出会ったのは、「宇宙人、未来人、超能力者」にしか興味がないという変人クラスメイト、涼宮ハルヒだった。
そんな彼女に巻き込まれる形で、ハルヒが結成した「SOS団」なる謎の団体に参加させられたキョン。同じく巻き込まれた先輩の朝比奈みくる、読書少女の長門有希、イケメン転校生の古泉一樹と共にゆるゆると活動していた。
ところが3人はキョンに対して、次々とおかしなカミングアウトをしてくる。朝比奈さんは「未来人」、長門は「宇宙人」、古泉は「超能力者」だというのだ。そしてハルヒが「世界の創造主」のような特別な力を持っているというのだが‥‥‥。
特徴・感想
特徴を3つにまとめました。
- ①キョンの独特な語り口
- ②可愛い女の子たち
- ③王道なSF展開
①キョンの独特な語り口
本書は一人称小説なので、主人公であるキョンが語る形で書かれています。
そのキョンの語り口が独特で、癖になります。
例えばこんな感じ。
もっともな怒りを持って憤然と振り返った俺が見たものは、俺の襟をひっつかんで突っ立っている涼宮ハルヒの——初めてみる——赤道直下の炎天下じみた笑顔だった。もし笑顔に温度が付帯しているなら、熱帯雨林のど真ん中くらいの気温になっているだろう。
(本書より引用)
機知に富んでいるような、「厨二病」感が溢れてもいるような‥‥‥。なんと表現していいかわからないような独特な文体かなと思います。ラノベならではの自由さかと。
個人的には、最初は独特な比喩表現が「ちょっとめんどくさいなあ」と思っていたのですが、これがだんだんと癖になってくるので不思議でした。
人によっては合わないと感じる人もいるかもしれませんね。好きな人にはたまらないって感じの文体だと思います。
全体的に文章はライトで読みやすいです。あんまり普段本を読まないよ、って人でも楽しめるんじゃないかなあと思いました!
②可愛い女の子たち
メインヒロインの涼宮ハルヒに加えて、朝比奈みくる、長門有希という3人の魅力的なヒロインが登場します。
涼宮ハルヒは、「変人、活発、好奇心」などの言葉が似合います。自分の好奇心に真っ直ぐで、ある意味「究極の純粋」なのかも(?)。溢れる行動力やツンデレな感じが魅力です。
朝比奈みくるは、「これぞ可愛い先輩の代表」というキャラクターですね。ちょっとドジなところや空回りするところがたまらんという人も多いのではないでしょうか。魅力はやっぱり女の子らしさ、可愛さですかね。
長門有希は、「冷静、寡黙、有能」な読書少女キャラです。困ったときの長門さんって感じで、「涼宮ハルヒ」シリーズを通してキョンを何度も助けてくれる存在です。シリーズ4作品目でアニメ映画化もされた「涼宮ハルヒの消失」ではメインヒロイン的なポジションになります。そこでファンになった人も多そうです。
こんな感じで3人の魅力的な女の子キャラクターが出てきます。読んだ後は、きっと誰かのファンになっているんじゃないでしょうか。
③王道なSF展開
ライトノベルでもありつつ、王道のSF作品としても楽しめる作品だと思います。
宇宙人、未来人、超能力者がそれぞれ能力を発揮する場面もきちんとありますし、バトル展開も楽しめます。
そしてハルヒが作り出す「閉鎖空間」と「神人」いうのが、物語の肝になってきます。この「閉鎖空間」というのは、ハルヒがフラストレーションをため込むと作り出されるもう一つの世界みたいなものです。その中で「神人」と呼ばれる巨人が暴れることでフラストレーションを解消しているようです。
ハルヒに備わった「もう一つの世界を作り出す能力」というSF設定が、物語の大筋を作り出しているわけですね。SF作品として、ストーリーの完成度が非常に高いです。
ラノベが苦手な人もストーリーだけで楽しめるので、自信を持っておすすめできる一冊です。
ちょっと深掘り
「ハルヒ」は読んでいてなぜ飽きないのか
僕は「涼宮ハルヒの憂鬱」は「ライトノベルの教科書」みたいな作品だと思っています。
というのも、物語の構成が本当によくできているんです。
- ①ハルヒやキョンの紹介。SOS団結成
- ②3人(宇宙人、未来人、超能力者)のメンバー登場
- ③3人が順番に自己紹介
- ④【小事件】3人それぞれが能力を発揮
- ⑤【大事件】ハルヒが能力を発揮
物語を大きく分けるとこんな流れなんですね。「人物紹介」から「小事件と解決」、「大事件と解決」という展開で、読み手が飽きないんです。最初の方の物語が大きく動かないところは、キャラの魅力やキョンのユーモアのある文体で読ませ、後半からは事件が起きることで読者が引き込まれるようになっています。
キャラクターの魅力と物語性を掛け算するのがライトノベルの特徴ですが、その意味でまさに「ライトノベルの教科書」みたいな作品だと思いました。
以上です!