おすすめの現代小説7選【未来の古典となる今の純文学たち】

何か読書したいけれど、何を読んでいいかわからない…
純文学を読むとすぐに退屈してやめてしまう…
おすすめの本を教えて欲しい。

そんな悩みにお答えします!

100年後には今の夏目漱石や芥川龍之介の作品のような、名作として扱われている。
そんな作品を集めました!

目次
・風の歌を聴け(村上春樹)
・限りなく透明に近いブルー(村上龍)
・教団X(中村文則)
・火花(又吉直樹)
・黒冷水(羽田圭介)
・蛇にピアス(金原ひとみ)
・キッチン(吉本ばなな)

この記事を書いている僕は、読書年間200冊以上を7年間続けています。
そしてその中の約8割が小説です。

そんな僕がご紹介します!

風の歌を聴け(村上春樹)

村上春樹のデビュー作

1970年夏、あの日の風は、ものうく、ほろ苦く通りすぎていった。僕たちの夢は、もう戻りはしない――。群像新人賞を受賞したデビュー作

1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、友人の<鼠>とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、<僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。

引用元:講談社BOOK倶楽部「風の歌を聴け」内容紹介(https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203590

あの村上春樹のデビュー作です。
独特な文体、「喪失」と「再生」というテーマ性。後の作品に繋がるエッセンスが詰め込まれています

「ノルウェイの森」が合わなくて村上春樹を読まない人が多いようですが、そういう人にこそ一読して欲しいですね。

というのも、「ノルウェイの森」は村上春樹作品の中ではかなり特殊で、いわゆる「リアリズム小説」というジャンルになります。
そんな専門用語を使われても…という人は、まあリアルな小説なんだな、くらいに思ってもらえれば。

それに対して「風の歌を聴け」を含む多くの作品は、もっと現実離れしていて、表現が遠回しだったり、ファンタジー色が濃かったりします。


僕も最初は「ノルウェイの森」があまり理解できず、村上春樹作品を敬遠していました。

しかしきっかけがあって「風の歌を聴け」を読み、その独特な文体や物語の進め方がクセになり、いつしかファンになっていました。

他の作品を経ることで、以前は理解できなかった「ノルウェイの森」の素晴らしさに気づくこともできました。

村上春樹初心者の方に、是非お勧めしたいです。
短いので、2時間くらいで読めますしね。

また、「風の歌を聴け」と続編を含む4冊の作品
風の歌を聴け (講談社文庫)
1973年のピンボール (講談社文庫)
羊をめぐる冒険 (講談社文庫)
ダンス・ダンス・ダンス (講談社文庫)
は、「鼠三部作+α」といわれています。

順番に読んでいくのも非常におすすめです。

間違いなく、100年後には「古典」になっているでしょう。

限りなく透明に近いブルー(村上龍)

村上龍のすべてはここから始まった!

文学の歴史を変えた衝撃のデビュー作が新装版で登場!解説・綿矢りさ米軍基地の街・福生のハウスには、音楽に彩られながらドラッグとセックスと嬌声が満ちている。そんな退廃の日々の向こうには、空虚さを超えた希望がきらめく――。著者の原点であり、発表以来ベストセラーとして読み継がれてきた、永遠の文学の金字塔が新装版に! 〈群像新人賞、芥川賞受賞のデビュー作

引用元:講談社BOOK倶楽部「新装版 限りなく透明に近いブルー」内容紹介(https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205060

村上龍のデビュー作です。
ものすごく刺激的な、スパイスの効いた小説です。

「ドラッグ」、「セックス」、「暴力」にまみれた主人公「リュウ」の日常が描かれており、テーマのみを羅列すると、拒絶反応を示す人もいるかもしれません。

しかしながら、この本からはそういったテーマから予想される「下品」な雰囲気が、不思議と感じられません
そこには若者の青春のエネルギーやセンシティブな心情が、どこまでも透き通った美しさで描かれていました

読む者の感覚をグラつかせるような危うい思想、蠱惑的でポエムのような文体。
「小説はここまでできるのか!」、と驚くと同時に、このような尖った作品がちゃんと評価されている1976年はいい時代だったんだろうなあ、と思いました。

ちなみに、作者自身の事実をベースにかかれたらしき作品が、他にも2作あります。
69 sixty nine (文春文庫)高校時代
村上龍映画小説集 (村上龍電子本製作所)←上京後すぐ(例外あり)
新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)上京後しばらくしてから
時系列でいうと、だいたいこんな感じになっています。

エンターテインメント色の強い69 sixty nine (文春文庫)や、短編集である村上龍映画小説集 (村上龍電子本製作所)を先に読む方が、とっつきやすくておすすめです。

「限りなく透明に近いブルー」は、分量自体はかなり短く、1~2時間で読めます

文学の世界自体を広げた名作として、読み継がれる一冊でしょう。

教団X(中村文則)

ふたつの対立軸に揺れる現代日本の虚無と諦観、危機意識をスリリングに描く圧巻の大ベストセラー!

突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国の根幹を揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、そして光とは何か。

宗教、セックス、テロ、貧困。今の世界を丸ごと詰め込んだ極限の人間ドラマ! この小説には、今の私たちをとりまく全ての“不穏”と“希望”がある。

テレビ番組で読書芸人にも絶賛された著者の最長にして圧倒的最高傑作がついに待望の文庫化!

引用元:集英社作品紹介ページ(https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-745591-5

今、日本で最も勢いのある作家といえば、中村文則です。

掏摸(スリ) (河出文庫)」や「悪と仮面のルール (講談社文庫)」が世界的に評価されたり、「去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)」など映像化作品もどんどん増えてきています。

著作も多数あるなかで僕が選んだのは、「教団X (集英社文芸単行本)」です。

一時期、かなり話題になっていたようなので、読書家の方は共感して下さるかもしれません。

先に所要時間をお話しすると、かなりボリュームのある長編で、読むのに時間がかかります。
しかし次の展開が常に気になる構成になっていて、僕は夢中になって読んでいるうちに5, 6時間が経っていました。一気読みでした。

自然科学、政治、宗教、哲学…無数の重厚なテーマがあますことなく全て深く掘り下げられ、最後には「これしかない」という答えに辿り着きます。

「皆さん。私達は人間です。不安定だけど、人間です。皆さん」
 拍手が続く。歓声が起こる。
「共に生きましょう!」

引用元:中村文則 著. 教団X (集英社文芸単行本)

長い物語を経てこの言葉が目に入ったとき、自然な感動を覚えました。

エンターテイメントとしても面白く読めます。

最強の小説です。

火花(又吉直樹)

売れない芸人の徳永は、熱海の花火大会で、先輩芸人である神谷と電撃的に出会い、「弟子にして下さい」と申し出た。神谷は天才肌でまた人間味が豊かな人物。「いいよ」という答えの条件は「俺の伝記を書く」こと。神谷も徳永に心を開き、2人は頻繁に会って、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。吉祥寺の街を歩きまわる2人はさまざまな人間と触れ合うのだったが、やがて2人の歩む道は異なっていく。徳永は少しずつ売れていき、神谷は少しずつ損なわれていくのだった。お笑いの世界の周辺で生きる女性たちや、芸人の世界の厳しさも描きながら、驚くべきストーリー展開を見せる。

引用元:文芸春秋BOOKS内容紹介ページ(https://books.bunshun.jp/sp/hibana

知らない人はいないほど有名な作品ですよね。

とはいえ、たまたままだ読んでいない人や、「お笑い芸人が書いた本なんて…」と敬遠している人もいるかもしれないので、紹介します。

素直に、めちゃくちゃ面白いです。僕は3回は読みました。

笑を追究する芸人たちのひたむきな姿に胸を打たれました。
また、「ウケやすい笑い」と「本当の笑い」といった「お笑い談義」には、なぜか強く惹きつけられるものがありました。

「…淘汰された奴等の存在って、絶対に無駄じゃないねん。やらんかったらよかったって思う奴もいてるかもしれんけど、例えば優勝したコンビ以外はやらん方がよかったんかって言うたら絶対そんなことないやん。…」
(中略)
「絶対に全員必要やってん」

引用元:又吉直樹 著. 火花 (文春文庫)

お笑いの下にはすべてが肯定されるような気さえして、明るい気持ちになることができます。

そんなに長い作品でもありません。2~3時間くらい使って読む価値は必ずあります。

芸人が書いたとかそんなこと関係なく、間違いなく名作です!

黒冷水(羽田圭介)

兄の部屋を偏執的にアサる弟と、執拗に監視・報復する兄。出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」。兄弟間の果てしない確執に終わりはあるのか? 当時史上最年少十七歳・第四十回文藝賞受賞作!

引用元:河出書房新社作品紹介ページ(http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309407654/

スクラップ・アンド・ビルド (文春文庫)」で芥川賞を受賞して一躍有名になった羽田圭介。

斬新な切り口と論理的な文章構成が特徴です。

僕が選んだのは、デビュー作「黒冷水 (河出文庫)

著者17歳のときに書かれた作品なのですが、あまりにも緻密で成熟した作品だったので、非常に驚きました

憎み合っている兄弟間の家庭内ストーカーという衝撃的なテーマが描かれいます。

 修作はまだ、自分が罠にかかったことには気付いていない。当たり前だ。現時点では彼にはまだなんの痛みも与えていないのだから。
 正気はデスクトップ型パソコンに罠を繋いだ。回収した罠を、デジタル技術で更に強力なものに作り替える。
 今度の罠は強力だ。前回のものが、肉体的苦痛を相手に与える罠だった。正気は罠をマウス操作で強化させる。今回は、精神的苦痛だ。

引用元:羽田圭介 著. 黒冷水 (河出文庫)

テーマ自体はすごくドメスティックなものですが、展開はどこまでもダイナミックです。

この本を選んだ理由は以下の3つです
①テーマ、切り口が斬新で
②そんなテーマで見事に壮大な物語を作り上げており
③エンターテイメントとしても面白い

最後に驚きの展開が待っているのも高評価ポイントですね。

他に類を見ない才能を持った作家として、羽田圭介の名は間違いなく語り継がれるでしょう。

蛇にピアス(金原ひとみ)

蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅せられたルイは舌ピアスを入れ身体改造にのめり込む。恋人アマとサディスティックな刺青師シバさんとの間で揺れる心はやがて…。第27回すばる文学賞、第130回芥川賞W受賞作。

引用元:集英社作品紹介ページ(https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=4-08-746048-7

綿矢りさ著「蹴りたい背中 (河出文庫)」と共に第130回芥川賞を受賞した有名作品。映画化もされました。

この本の魅力は、著者のハイセンスな感覚にあると思います。

女性作家だからかもしれませんが、僕にとっては未知の感覚、未知の価値観軽い筆致で描かれており、文章すべてが魅惑的でした。

「スプリットタンって知ってる?」
「何? それ。分かれた舌って事?」
「そうそう。蛇とかトカゲみたいな舌。人間も、ああいう舌になれるんだよ」
 男はおもむろにくわえていたタバコを手に取り、べろっと舌を出した。彼の舌は本当に蛇の舌のように、先が二つに割れていた。

引用元:金原ひとみ 著. 蛇にピアス (集英社文庫)

優れた芸術作品というのは鑑賞者の価値観を揺るがすほどの衝撃を与えるものだと思いますが、この作品はまさにそういう作品でしたね。

また、先が気になる展開であり、文章も読みやすいので、すらすらと読めるのも高評価なポイントです。

2000代初等で最もハイセンスな作品として後世に残ること間違いなしです。

キッチン(吉本ばなな)

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う――。同居していた祖母を亡くし途方に暮れていた桜井みかげは、田辺家の台所を見て居候を決めた。友人の雄一、その母親のえり子さん(元は父親)との奇妙な生活が始まった。絶望の底で感じる人のあたたかさ、過ぎ去る時が与える癒し、生きることの輝きを描いた鮮烈なデビュー作にして、世界各国で読み継がれるベストセラー。「海燕」新人文学賞・泉鏡花文学賞受賞作。

引用元:幻冬舎作品紹介ページ(https://www.gentosha.co.jp/book/b7088.html

最後にご紹介するのは、吉本ばなな著、「キッチン (角川文庫)」です。

唯一の肉親だった祖母を亡くして悲しみの淵にいる主人公みかげが、雄一やえり子さんと触れ合い、祖母の死と向き合うようになる物語。

僕がこの本に出合ったのは、確か中学生の頃でしたが、そのときから冒頭あたりのこの一節が印象的だと感じていました。

 涙があんまり出ない飽和した悲しみにともなう、柔らかな眠けをそっとひきずっていって、しんと光る台所にふとんを敷いた。ライナスのように毛布にくるまって眠る。冷蔵庫のぶーんという音が、私を孤独な思考から守った。そこでは、結構安らかに長い夜が行き、朝が来てくれた。

引用元:吉本ばなな 著. キッチン (角川文庫)

「飽和した悲しみ」ってどんなだろう?
どうしてこんな風に感じるんだろう?

中学生の僕に、本を読んで考えることの面白さを教えてくれたのが、この本でした。

短編で文体も軽くて読みやすく、また読んだ後にすがすがしい希望を感じられるような素晴らしい小説です。

本書に収録されている短編、「満月ーキッチン2」「ムーンライト・シャドウ」も併せて読んで欲しいですね。

親しみやすさと希望に満ち溢れた「キッチン」は、まさに普及の名作です。

まとめ
・風の歌を聴け(村上春樹)
・限りなく透明に近いブルー(村上龍)
・教団X(中村文則)
・火花(又吉直樹)
・黒冷水(羽田圭介)
・蛇にピアス(金原ひとみ)
・キッチン(吉本ばなな)

以上です!